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「想い出はモノクローム…」

 NHKの番組で作詞家50周年を迎えた松本隆さんが取り上げられていました。

「木綿のハンカチーフ」「赤いスイートピー」「硝子の少年」‥キリがないほど数々のヒット曲がありますが、その中に「君は天然色」という曲があります。1981年の作品なのでそんな昔の歌は知らないよと言われそうですが、CMで使われたり、ラジオやテレビでも流れることがあったので、耳にされている人も多いのではないでしょうか。この曲は大滝詠一さんの「A  LONG  VACATION」というアルバムの1曲目に収録されていますが、アルバム名、ジャケットのカラフルな絵、ポップ調の透き通るメロディもあって、明るく軽やかな曲のイメージを持っていました。色あせた思い出をあの頃のように色鮮やかに蘇らせて欲しいと歌ってるのだろうと思って聞いてきました。40年間ずっと…

 

  番組の中でこの詞を書いた時のことが語られていました。詞を書く直前に妹さんを26才で亡くし、大きなショックでどん底の精神状態にあったと。見慣れた街の景色が白黒に見え、詩を書こうにも言葉が出てこなかったそうです。「人が死ぬと風景は色を失う。だから何色でもいい、染めてほしいとの願いだった」と。そして浮かんだのがあのフレーズ「想い出はモノクローム、色を点けてくれ~」だったそうである。 

 

  ラジオ、CM等で何度も耳にしてきましたが、そんな思いで作られたとは想像もしていなかったのでとても驚きました。この歌からは悲しみや寂しさというものを全く感じることがありませんでした。改めて聴いてみるとこれまでとは違う印象、違う歌にも聴こえないこともないですが、それでもやっぱりこれまで同様に軽やかで明るい歌に聴こえました。40年経っても古びれず聴き続けられているのは、苦悩の末に出てきた詞であり深い思いが込められているからなのでしょうか。この夏、作詞家松本隆さんの思いを感じながら「君は天然色」を聴いてみたいと思っています。 (H